デザイン教育を通じた地域貢献



 生活デザイン学科では、公立大学という立場から地域への貢献を重要なプロジェクトの一つとしてとらえています。そこで、大学と地域という二重の教育の場を設定し、「学生を育てる」「地域を育てる」ことを目的とした個性的で特色豊かな教育を行っています。
 これまでの主な活動としては、ファッションショー「GIFUを着る」「岐阜マザーズコレクション」を通した岐阜アパレル産業との交流、岐阜市中心商店街を飾るフラッグアートへの出展、地域農業の活性化を目指して開発されたいちごタブレット菓子「ぎふベリー」パッケージデザインの取り組み、クリエイティブな業界の著名人を招いての特別講義の実施などが挙げられます。大学内の授業ばかりでなく、これら学外における諸活動を経験することによって、学生達は授業で学ぶ内容と実社会との関わりを知り、社会的にも実務的にも大きく成長していきます。
 教員も、産官と連携したセミナーの開催や、岐阜市立図書館と連携したファッションライブラリーでの作品展示/公開講座、学外施設での卒業研究発表会の実施などの活動を行い、学外での積極的な情報発信につとめています。

平成28年度 活動実績

ファッション分野
翔工房への参加


翔工房は、一宮地場産業ファッションデザインセンターが主催する人材育成事業のひとつで、本学の参加は5回目です。平成28年度は全国から19校40名の応募があり、書類審査とプレゼンテーションの結果、25名に絞られました。その中、本学のファッション専修学生3名の参加が決まり、合同ミーティングや講師との製作打合せ、工場見学を経て、平成29年2月22日~24日に開催された尾州テキスタイルの総合展「THE 尾州」での展示、および、最終日の「翔the SHOW 2016」において、ファッションショー形式で発表されました。





「ギフチョウネクタイ」デザインコンテストの実施


「蝶ネクタイ もっと日常に、もっとカジュアルに、もっと何気なく」をコンセプトに、ギフチョウをテーマとした、蝶ネクタイのデザインコンペを行いました。メンズファッションアイテムである蝶ネクタイは、まだ我々の生活の中では身近な存在ではありませんが、小さな装飾品である蝶ネクタイを、もっと身近なアイテムとして生活に取り入れることは、岐阜市のアパレル産業の活性化のきっかけになるのではと考えました。
参加者は幅広く、のべ122作品の応募があり、服飾デザイナー、岐阜高島屋バイヤー、岐阜ファッション産業連合会理事と本学ファッションビジネス担当教員が審査を行い、最優秀賞1点、優秀賞2点と佳作5点を選定しました。また、応募作品をギフメディアコスモスに展示し、市民投票によって信長公450特別賞を決定いたしました。
平成29年3月11日(土)に、最優秀賞等8点と信長公450特別賞の授賞式を長良川国際会議場で行い、また、岐阜高島屋にて製品化されたものが販売されました。





「テキスタイルマテリアルセンターを教育拠点とした地場産業の振興に関する協定」の締結


ファッション専修では、数年前から羽島市のテキスタイルマテリアルセンターを利用した学外研修を実施し、テキスタイル関連産業を中心とした近隣の地場産業の理解をより深めるため、尾州産地の工場見学、同地で活躍するテキスタイルデザイナーの講義や素材トレンドセミナーの聴講などを行いました。これらの実績を踏まえ、平成28年度に羽島市とテキスタイルマテリアルセンター、本学が協定を結び、来年度以降これまでの学外研修をカリキュラムの中に位置づけることになりました。
協定書締結式は羽島市役所で行われ、尾州産地の課題に適切に対応し、次世代の繊維業界を担う人材育成・確保を図り、産地の発展に資することを目的とし、「テキスタイルマテリアルセンターを教育拠点とし、次世代の繊維業界を担う人材育成・確保の取組の推進」と「尾州産地及びテキスタイルマテリアルセンターの情報発信の推進」について連携し協力することが定められました。


建築・インテリア分野
柳ヶ瀬商店街活性化 建築卒業作品展示会・座談会

柳ヶ瀬をテーマとした建築・インテリア専修の卒業作品2点を、柳ケ瀬あい愛ステーションに10日間展示しました。これは、岐阜県美術館館長・日比野克彦氏が卒業研究・制作展に訪れた際に、柳ヶ瀬にぜひ展示するべきだ、と応援メッセージを寄せていただいたことに端を発しています。
展示中に、柳ヶ瀬で活動する方々にパネリストとして登場いただきながら、座談会を開催いたしました。柳ヶ瀬で活動するパネリストの方々からは生業と生活を通した「柳ヶ瀬」について貴重な話が伺えました。その上で、展示作品のもつ可能性などをご意見いただきました。全国にも同じようなアーケード商店街、シャッター街の問題を抱えていることを踏まえつつ、岐阜から街の中心市街地のあり方を会場の方からも質問や意見を頂き、議論することができました。

■展示会
日時:2月2日(木)~2月12日(日)(13:00まで)
会場:柳ケ瀬あい愛ステーション
出展者:井塚美咲・小枝陽永乃(建築・都市デザイン研究室2年)

■座談会
開催日時:2月11日(土) 16:00~17:30
会場:柳ケ瀬あい愛ステーション
テーマ:柳ケ瀬商店街活性化における建築の役割とは?
司会: 庵原義隆(YY architects/ 岐阜市立女子短期大学 非常勤講師)
パネリスト:林亨一(岐阜柳ケ瀬商店街振興組合連合会理事長)・上田哲司(やながせ倉庫オーナー)・畑中久美子(岐阜市立女子短期大学 専任講師)

主催:建築・インテリア専修 建築・都市デザイン研究室 畑中ゼミ
後援:やながせ倉庫  
応援メッセージ:日比野克彦

ヴィジュアル分野
「こどものもりプロジェクト(第二期)」

平成27年度に引き続き、岐阜市民病院中央病棟7階の小児病棟空間の壁画制作に取り組みました。昨年度制作したエレベーターホールから続く廊下空間やスタッフステーション前のスペースなど、約50㎡の壁面に対してペインティングを実施しました。制作期間中には病棟に入院する患者や病棟スタッフを交えたペインティング体験イベントなども開催しました。
また社会的・文化的な関心から、複数の新聞メディアで本プロジェクトが取り上げられました。





スポーツウェアブランド「敬天粋人」ブランディングデザイン


岐阜市のアパレルメーカーの三敬株式会社との産学連携事業として、フリースタイルフットボールのプレイヤーを主軸に据えたスポーツウェアブランド「敬天粋人」のブランド構築に向けたVIデザイン(シンボルマーク・ロゴタイプのデザイン)」に取り組みました。新規立ち上げとなるブランドの方向性をヴィジュアル面から見定めるため、「雅」「粋」「躍」の3つのブランドテイストの方向性を設定した上で、学生向けの演習課題としてマークのデザイン制作を実施いたしました。プロジェクトメンバーによる審議を経て、優秀作品4点を選出し、それぞれのブランドテイストにもとづいたファッションアイテムのコンセプト提案へと繋げ、平成29年3月6日~8日に開催されたファッション系イベント「ア・ミューズ岐阜」で展示されました。





ユネスコ無形文化遺産記念事業 美濃あかりアート展特別展示作品「鵜・匠」の制作


2014年に「和紙:日本の手漉和紙技術」としてユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受け、岐阜県「世界に誇る遺産」連合に加盟している市町村(岐阜市、大垣市、郡上市、関市、美濃市、八百津町、高山市、飛騨市、白川村)が、各市町村の文化遺産などをモチーフにあかりアートを制作し、PRする記念事業を実施しました。
ヴィジュアル専修の学生1名および指導教官で、岐阜市を代表し「ぎふ長良川鵜飼い」をテーマに美濃和紙あかりアート作品を制作することとなりました。制作技法は立体紙漉き技法をアレンジすることとし、構造材に3Dペンにて成形したABS樹脂を用いて、楮の溶解液を流しかけ成形しました。その生じる密度の差が、あかりを灯した際、光の濃淡となり趣ある作品となりました。美濃あかりアート展では世界遺産特設コーナーを設けられ、会期2日間展示された後、PR活動のため様々な場所で展示される予定です。






今後のプロジェクトの展開にご期待ください。

平成27年度 活動実績

ファッション&ヴィジュアル分野
スポーツブランドウェアの開発・提案


岐阜市内のスポーツアパレルメーカーである三敬株式会社と、女子サッカーウエアのブランド開発と商品化計画に取組みました。「岐阜・ハツ(初 x 発)!」を合い言葉に、ロゴマークをヴィジュアル専攻の学生が、パターン作製をファッション専修の学生が行い、実寸のサンプルを作製し、メディア発表いたしました。




建築・インテリア分野
金華通り並木道 ワークショップ「テニテオn(エヌ乗)」

平成27年8月20~21日に、ぎふメディアコスモスで、ワークショップ「テニテオn(エヌ乗)」を開催いたしました。このワークショップは、生活デザイン学科インテリアデザイン研究室と伊東豊雄建築設計事務所が主催し、ぎふメディアコスモス東の桂並木「テニテオ」を岐阜駅まで延長させることを構想するものです。


アイデアを膨らませた提案 (ぎふメディアコスモスからJR岐阜駅まで約2㎞の金華橋通りを車道を狭めるなどして、緑あふれた並木道にするという構想)の実現性について岐阜市議会で取り上げられ、 市長から「いろいろと課題もあるが夢があっていい提案、実現する方向で考えたい」との答弁がありました。

ヴィジュアル分野
「こどものもりプロジェクト」

平成27年度より「こどものもりプロジェクト」と題して、岐阜市民病院・小児病棟の壁画制作に取り組んでいます。
小児病棟の空間全体を「様々な動物の住まう森」と見立て、病棟内の各所に木々や動物などのペインティングを施し、病棟で過ごす子どもたちが森の自然や動物たちと触れあうことで、安らぎや楽しさを感じてもらえるようにしました。
プロジェクト初回となる今年度は、ヴィジュアル専修に在籍する1年生10名と教員によって、「こどものもり・エントランス」としてエレベーターホールの壁面と天井面へのペインティングを実施しました。




今後のプロジェクトの展開にご期待ください。

産官との共同事業

ファッション分野

翔工房

 「翔工房」は(財)一宮地場産業ファッションデザインセンターが主催する産学連携事業です。将来ファッション業界を担う学生に対して、早い段階から企画力を熟成する目的で創設されました。学生の斬新なアイデアを基に、学生と経験豊富な「匠の技」を持つ技術者とのコラボレーションによって、この世に一つしかないテキスタイルが生み出されます。この素材を、学生は素材イメージを膨らませながらガーメントにしていきます。日本有数の繊維産地である尾州を背景にしているからこそ可能な貴重な体験が得られます。
 本学では選抜された学生が、「匠」講師のマンツーマン指導を受けながら素材作りからガーメント制作へと約10ヶ月かけて学び、その成果を卒業研究発表会や、総合展「THE尾州」において発表しました。

岐阜マザーズコレクション

 平成22年から岐阜ファッション産業連合会との産学協働プロジェクト「岐阜マザーズコレクション」に参加しています。「学生達の母親世代に贈るファッション」をショー形式で発表し、ミセス層を切り口として岐阜アパレル産業を活性化を図ることを目標としています。
 教育面における狙いとしては、このプロジェクトを通じて、異なる年齢域の多様な志向性・体型を理解し、ターゲットに合わせたマーケットイン発想を身につけることを意図しています。また、アパレル生産体験を通じて実際に企画・デザインで使える素材知識とパターン製作能力を養い、グループワークと協業によるチームワークの体験によって学生のビジネス感覚とコミュニケーション能力を育成することをめざします。

建築・インテリア分野

「浜の会所」ワークショップ参加

東日本大震災で多大な被害を受けた宮城県気仙沼市に、地域の方々の会所(集会施設)を自力建設する復興支援プロジェクトに本学教員と学生が参加しました。このプロジェクトは、滋賀県立大学と宮城大学が主体となって総務省の地域活力創出モデル実証事業として平成25年8~9月の一ヶ月間実施されたものです。
 建物の主要素材には地域で採れる竹と土が用いられ、本学教員による土壁の工法指導のもとで本学学生3名も建設に参加しました。学生は被災地で地域の方々と交流し、メディア等からは伝わってこない地域の一面を知るとともに、建築の持つ奉仕性を体感し、実際の素材に触れて建築の理解を深めていました。

公開講座 「親子で地震に備えよう -弱い建物と強い建物-」

近年、東日本大震災を経て地震被害に対する関心がいっそう高まりを見せ、地震への備えとして既存建物の耐震化が必要となっています。この講座では、地震はなぜ起きるのか、安全な建物とするにはどうすればよいのか、地震対策はどのようなことをするのかなどについて、小学生を対象として、分かりやすく解説しています。また、地震に対する建物の挙動は言葉だけではわかり難いため、ペーパークラフト教材を使い、簡単な建物模型を工作することによって理解を深め実感できるようにしています。大地震が発生する前に、地震による被害を抑えるための対策が進むことを目的として、安全で安心な街づくりのための活動を行っています。

ぎふメディアコスモス 「グローブ」布貼りワークショップへの参加

ぎふメディアコスモスの2Fに設置される「グローブ」と呼ばれる布で出来た空間装置の布貼りワークショップに、生活デザイン学科学生有志が約3ヶ月にわたり、課外活動として参加しました。
 このワークショップが実行された経緯として、平成25年の生活デザイン学科特別講義でお呼びしたテキスタイルコーディネーター/デザイナーである安東陽子氏が、ぎふメディアコスモスの建築設計チームの一員としてテキスタイルデザインを担当されていたご縁で安東氏より、生活デザイン学科にお声がけをいただき、実現したものです。
 この建物は、建築家・伊東豊雄氏の設計で、コンペ時から話題の建物であり、開館後、長年に渡り地域施設として使われる建物です。学生にとって、つくる過程を体験できたことに加え、一線で活躍するデザイナーの仕事に、実際の現場で関わる事ができたことは今後の糧となります。

ヴィジュアル分野

タブレット菓子「ぎふベリー」パッケージデザイン

「ぎふベリー」は、岐阜産の規格外品いちごを材料として使用したタブレット菓子です。通常、大半が廃棄されてしまう規格外品を有効活用することで、農家の収益改善をはかると共に岐阜いちごの知名度向上とブランド化を目指しており、最終的に岐阜の地域農業を活性化につなげることを目標としています。
 本学科はプロジェクトを運営するJAぎふ、岐阜農林事務所、岐阜市農林部、岐阜市いちご部会より依頼を受けて、学生有志によるプロジェクトチームを結成し、ぎふベリーのパッケージデザインを制作しました。本プロジェクトの内容は複数のメディアで取り上げられ、産官学が一体となった地域活性化の取り組みとして大きな注目を集めました。

消費生活センターのパネルデザイン

岐阜市消費生活センターからの依頼を受け、若年層へ安全な消費生活を呼びかけるパネルの制作を行いました。学生たちは事前に消費生活に関する講習を受けて知識・理解を深め、参加した20名全員がそれぞれB1サイズ5枚組のデザインを提案しました。制作においては、従来のパネルが文字情報のみで視覚的訴求力が低かったので、イラストを用いて情報をわかりやすく明確にするというルールを設けました。20案の中から最優秀作品が実用案として採用され、平成24年3月以降、啓発活動イベント等に活用されることとなりました。


「岐阜市まるごと環境フェア」フラッグアート制作

岐阜市が「人と自然が共生し、環境と調和する都市」の実現を目指して実施する「岐阜市まるごと環境フェア」に参加し、フラッグアートを制作しました。学生たちはヴィジュアルのアイディアを自由に発想して制作にあたり、完成したフラッグは平成22年11月に岐阜市神田町商店街に展示されました。

「特色ある大学教育支援プログラム」採択

 生活デザイン学科の実践的で多彩な教育が、平成15年度に「特色ある大学教育支援プログラム」に採択されました。「特色ある大学教育支援プログラム」とは、大学教育を改善するために行われている様々な取り組みのうち、特色ある優れたものを文部科学省が選定し、高等教育の改善と活性化促進への活用を目的とした企画です。平成15年7月末の締め切り時の応募総数は、四年制大学と短期大学を合わせて全国で664件と多数にのぼり、9月中旬に文部科学省が発表した採択数は全部で80件でした。本学科は8.3倍の難関を突破し、全国の公立短期大学の中では唯一の採択大学となりました。
 これまでに本学科が積み上げてきた着実な実績を評価し、さらに視野を広げて今後も特色ある教育を実践することを期待して、文部科学省の採択があったものと考えています。