和歌研究から、ことばの魅力を考える
藤原定家の和歌を研究しています。定家は『新古今和歌集』の選者のひとりであり「新古今風」を確立した代表的な歌人です。新しい歌のことばを開拓すると同時に古いものを大切に守り、古典的な世界を取り入れつつ、これまでにない斬新な表現世界を作り上げる定家の姿勢は、『新古今和歌集』を勅撰和歌集のなかで最も芸術性の高いレベルへと引き上げました。私はそうした定家の方法を、歌ことばの選び方や表現の仕方に注目しながら地道に考え続けています。
加えて、定家が、武士の勢力によって天皇制の力を根底から覆した当時の危機的な乱世に、貴族文化の象徴である和歌を後の世へつなごうとした、その芸術家としての姿勢にも魅了されます。(第13回解釈学会賞受賞、2019年)